Poison & Medicine ブログ 毒と薬
2010.1.27
音楽とアート
介護社会論
手拍子こそ最高のパーカション!
1月17日(日)、ご入所者とその家族の方々をお招きして医療法人双寿会「新年会」を開催しました。
第一部の食事会のあと、第二部では地元の「森民謡会」のみなさんの公演をご覧いただきました。
ライヴは、演者(パフォーマー)と聴衆(オーディエンス)との協同作業です。パフォーマーがノレばオーディエンスはノリ、ノッたオーディエンスの反応にパフォーマーはますますノッて、いつしかパフォーマーと聴衆との「交響」(シンフォニー)、ダンス音楽的にいえば「グルーヴ」が生まれるわけです。
オーディエンスがパフォーマーをノせるもっとも有効な手だては手拍子(ハンドクラップ)です。ところが当施設のご利用者には、脳こうそくなどの後遺症で手拍子がままならないひとたちも多くおられます。そこでわたしは、ひと一倍大きな音で手拍子(ハンドクラップ)を鳴らすテクニックを身に付けました。
手のひらに空気を軽くタメるようにして左右の手を交差に瞬時に叩きつけると「パッーン」という見事な破裂音が出ます。 会場に使う豊寿苑の1階食堂は、ステージあたりが吹き抜け構造になっているので、音響が思いのほかよくて、「森民謡会」のみなさんの演唱に合わせてハンドクラップしているうちに、いつしかトランス状態に入っていました。
ハンドクラップの反復されるリズムは、おそらく心臓の鼓動とシンクロして、脳波でいえアルファ波、瞑想状態を生み出します。 こ
の状態にあるとき、先人は「神」の隣在を実感したのでしょう。神社で柏手を打つと「パーン」という音が森の奥深くに沁み込んで、ときにこだまして荘厳ですらあるのを思い起こしてください。
そういえば、パキスタンのカッワリーは、声とハンドクラップとのインタラクションをとおしてアラーと一体化するトランス系の音楽です。また、モロッコやエチオピアなど北アフリカのサハラ砂漠周辺の乾燥した地域の音楽でも同様と感じます。
彼の地でハンドクラップは「ユーユー」とよばれる独特の喉笛とともに、人口密度の低い、乾いた大地でのコミュニケーション手段としても欠かせないものでした。
なんにせよハンドクラップというのは、もっともプリミティブにして、もっともクールな打楽器だと再認識しました。 介護スタッフの気のない手拍子を見るにつけ「どうせならそれをマテリアル(素材)に自分勝手にグルーヴすればいいじゃん」と感じるのですが、なんてかれらは生真面目というか不器用なんでしょう。