Poison & Medicine ブログ 毒と薬
2014.7.10
音楽とアート
きゃりーぱみゅぱみゅ新作の紹介記事を『ミュージック・マガジン』8月号に書きました
2014年7月20日発売の『ミュージック・マガジン』8月号のアルバム・レビューで、きゃりーぱみゅぱみゅの3作目のニューアルバム『ピカピカふぁんたじん』の紹介記事を1ページで書かせてもらいました。
きっかけは、いつもの原稿依頼の返信メールに「ダンスが大好きな17歳になる自閉症の娘はきゃりーの大ファンで、この秋に娘とコンサートに行くことになりました」と書いたことでした。
それを読んだ編集長から「ちょうどきゃりーの新作が出るので書いてみませんか?」とオファーされました。たしかに娘はきゃりーの2枚目のアルバム『なんだこれくしょん』をiPodで全曲120回以上くり返し聴いたぐらいのフリークですが、私は娘につき合って聴いていたにすぎません。第一、Jポップにもアイドルにもそんなにくわしくありません。
だから、いったんは自分には荷が重すぎるとおことわりするつもりでした。が、自分の可能性を伸ばす意味でもまたとないチャンスであると思い直し、引き受けることにしました。
それから〆切までの約1週間、朝のランニングで、スポーツクラブで、職場のデスクで、自宅の書斎で、寝ても覚めてもきゃりー漬けの日々を過ごしました。
そうして私の頭の中に浮かび上がってきたのが、きゃりーのスーパー・ポジティヴともいえるスタンスでした。きゃりーの音楽そのものの解説は『ミュージック・マガジン』8月号の記事で読んでいただくとして、ここではこのことについてふれたいと思います。
「ピカピカ」や「キラキラ」などの擬態語、「ハッピー」や「ラッキー」などのわかりやすいことばを用いてハイ・テンションで展開するきゃりーの歌は、ちょっと聴いた感じでは子どもっぽく他愛もないものに思えるかもしれません。でも、よくよく聴いてみると、未来に希望をもって積極果敢に前進し続ける彼女の強い意志が感じとれます。
彼女の歌は、ことばの、音としての響きのおもしろさが大きなウェイトをしめているので、歌詞を文字で書いてしまうと深みが感じられなくなってしまうので割愛しますが、中田ヤスタカが創り出すきらびやかな音の世界と相まって、私にはこんなメッセージが聞こえてきます。
「だいじょうぶ。難しく考えすぎないで、まずは一歩踏み出してみよう。そうすればきっと明るい未来が広がってくるから」
きゃりーの奇抜に思える音楽もファッションも、彼女の楽観的でポジティヴな行動主義の先に現れたラディカルさといえるでしょう。
この流動化社会。明日はどうなるかだれにも予想できません。だから、いつも不安が先に立って、何をするにも臆病になってしまいがちです。きゃりーを見習わなければと心から思いました。