Poison & Medicine ブログ 毒と薬
2014.6.17
音楽とアート
戦前のSPレコードがおしゃれに甦る〜ぐらもくらぶの活動(その2)
ところで、浅草芸人といえば、渥美清、萩本欽一、ビートたけしの名前を思い出す人も多いと思います。しかし、浅草が生んだ代表的なコメディアンは、なんといってもエノケンこと榎本健一でしょう。
エノケンは、「エロ・グロ・ナンセンスの時代」と呼ばれた昭和の初めに、アメリカ映画のギャグや早いテンポ、ジャズのセンスを取り入れた、歌あり笑いありのレビューで大人気になりました。かつては豊寿苑でも『エノケンの青春酔虎伝』だとか『どんぐり頓兵衛』だとか『ちゃっきり金太』だとか、エノケン映画を上映したものです。
喜劇王エノケンのデビューが浅草オペラだったことはよく知られています。浅草オペラとは大正半ばに浅草の劇場で大人気となった大衆向けの軽オペラ(「オペレッタ」といわれます)。その熱狂的なファンはオペラとゴロツキを合わせて「ペラゴロ」といわれていました。宮沢賢治や川端康成もペラゴロでした。
浅草オペラは関東大震災で壊滅的な打撃を受けて消滅しました。そのため、全盛期の浅草オペラの録音は残っていないとされていました。ところが、『想ひ出の浅草』にはその時代の録音が数多く収録されました。これは快挙です。浅草オペラがなければ、エノケンもロッパもあきれたぼういずも出てこなかったでしょうし、その意味で日本のポピュラー・ミュージックの源流の一つを知る上でもとても意義のある復刻だと思います。