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Poison & Medicine ブログ 毒と薬

2015.10.21

カルチャー

「情報最大・叡智最小」 〜 小牧市「ツタヤ図書館」問題に思う

小牧市の新図書館建設をめぐる住民投票は反対多数になりました。この結果を受けて、小牧市は、10月20日、TSUTAYAを展開するCCCとの契約を解消し、いったん白紙に戻すことを発表しました。
といっても、ゼロベースにするのではなく、CCCとの再連携の可能性も残しつつ、市議会や市民と協議して計画の見直しを図りたいとのことのようです。
これにはいろいろと批判もあるようですが、私は今回の市長の決定を支持します。
私は、新図書館の建設計画は前から知っていましたが、それが「ツタヤ方式」になることはつい最近まで知りませんでした。だから、今回の見直しを機に、小牧市民の一人として建設計画の協議に積極的に関わっていければと考えています。
ところで、小牧市がCCCとの契約解消を発表したその日、朝日新聞朝刊「文化・文芸」欄に「図書館考 賛否巻き起こすツタヤ流」という記事組が掲載されました。
この記事で印象的だったのは、カフェや書店などを併設したり、イベントをひんぱんにおこなうなどして、当初の予想を上まわる来館者があるにもかかわらず、なんで世間からここまで批判されるのかと戸惑うCCCの高橋・図書館カンパニー社長の姿でした。
高橋氏によると、CCCでは、購入図書は、まず系列の「代官山 蔦谷書店」などでよく売れている本を参考に仮の購入リストを作成し、そのうえで、図書館の利用者アンケートの結果を踏まえて決めるとのことでした。
そして、こんなことを自慢げに語っています。
「CCCは書籍の販売、流通量では日本一。そのデータを使うことが僕たちの強みになる」(同記事より)
わかっちゃないなあ。
そういうビッグデータに偏りすぎた思考スタイルがイヤなんだって。
戦後日本を代表する知識人、丸山眞男(まるやままさお)は、福沢諭吉の『文明論之概略』をテキストにした晩年の講義録『「文明論之概略」を読む』(上・中・下)(岩波新書 1986年)で知の構造について、こんなふうに論じています。
知の土台には「叡智」wisdom、 その上に「知性」intelligence、その上に「知識」knowledge、一番上に「情報」information がきます。「叡智」と「知性」を土台にして「知識」が発揮され「情報」が生きるのですが、現代の社会は「情報最大・叡智最小」の逆三角形になっていると批判しています。
この知の逆三角形こそ、CCCのスタイルのように私には思えます。
ことのついでに、ベストセラーにもなった『「文明論之概略」を読む』を、小牧市立図書館と、CCCが指定管理者になっている佐賀県の武雄市図書館のそれぞれで蔵書検索してみました。結果は、小牧市立図書館にはありましたが、武雄市図書館にはありませんでした。
ちなみに、小牧市立図書館には『丸山眞男集』全16巻と別巻の全部が揃っていましたが、武雄市図書館には1冊もありませんでした。
さらに驚き呆れたのは、武雄市図書館には、日本の思想史を学ぶ上で基本中の基本といえる丸山真男の『日本の思想』(岩波新書)さえ置いていない有様です。ここまでくると、CCCは私たち日本人の脳を「タコツボ」ならぬ「タコのお造り」にしようと目論んでいるのではないかと勘ぐってしまいます。
文科省の方針で国立大学の人文社会系の大幅な見直しが迫られている今日この頃、丸山が取り組んだ批判精神を育てる「教養」の立場はますます悪くなっているようで、このままでは日本はダメになってしまうのではないかと心配でなりません。

小牧市の新図書館建設をめぐる住民投票は反対多数になりました。この結果を受けて、小牧市は、10月20日、TSUTAYAを展開するCCCとの契約を解消し、いったん白紙に戻すことを発表しました。

といっても、ゼロベースにするのではなく、CCCとの再連携の可能性も残しつつ、市議会や市民と協議して計画の見直しを図りたいとのことのようです。

これにはいろいろと批判もあるようですが、私は今回の市長の決定を支持します。

私は、新図書館の建設計画は前から知っていましたが、それが「ツタヤ方式」になることはつい最近まで知りませんでした。だから、今回の見直しを機に、小牧市民の一人として建設計画の協議に積極的に関わっていければと考えています。

 

ところで、小牧市がCCCとの契約解消を発表したその日、朝日新聞朝刊「文化・文芸」欄に「図書館考 賛否巻き起こすツタヤ流」という記事組が掲載されました。

この記事で印象的だったのは、カフェや書店などを併設したり、イベントをひんぱんにおこなうなどして、当初の予想を上まわる来館者があるにもかかわらず、なんで世間からここまで批判されるのかと戸惑うCCCの高橋・図書館カンパニー社長の姿でした。

高橋氏によると、CCCでは、購入図書は、まず系列の「代官山 蔦谷書店」などでよく売れている本を参考に仮の購入リストを作成し、そのうえで、図書館の利用者アンケートの結果を踏まえて決めるとのことでした。

そして、こんなことを自慢げに語っています。

「CCCは書籍の販売、流通量では日本一。そのデータを使うことが僕たちの強みになる」(同記事より)

わかっちゃないなあ。

そういうビッグデータ依存を少しも疑っていない思考回路が鼻持ちならないんだって。

戦後日本を代表する知識人、丸山眞男(まるやままさお)は、福沢諭吉の『文明論之概略』をテキストにした晩年の講義録『「文明論之概略」を読む』(上・中・下)(岩波新書 1986年)で知の構造について、こんなふうに論じています。

知の土台には「叡智」wisdom、 その上に「知性」intelligence、その上に「知識」knowledge、一番上に「情報」information がきます。「叡智」と「知性」を土台にして「知識」が発揮され「情報」が生きるのですが、現代の社会は「情報最大・叡智最小」の逆三角形になっていると批判しています。

この知の逆三角形こそ、CCCのスタイルのように私には思えます。

 

ことのついでに、ベストセラーにもなった『「文明論之概略」を読む』を、小牧市立図書館と、CCCが指定管理者になっている佐賀県の武雄市図書館のそれぞれで蔵書検索してみました。結果は、小牧市立図書館にはありましたが、武雄市図書館にはありませんでした。

ちなみに、小牧市立図書館には『丸山眞男集』全16巻と別巻の全部が揃っていましたが、武雄市図書館には1冊もありませんでした。

さらに驚き呆れたのは、武雄市図書館には、日本の思想史を学ぶ上で基本中の基本といえる丸山真男の『日本の思想』(岩波新書)さえ置いていない有様です。ここまでくると、CCCは私たち日本人の脳を「タコツボ」ならぬ「タコのお造り」にしようと目論んでいるのではないかと勘ぐってしまいます。

文科省の方針で国立大学の人文社会系の大幅な見直しが迫られている今日この頃、丸山が取り組んだ批判精神を育てる「教養」の立場はますます悪くなっているようで、このままでは日本はダメになってしまうのではないかと心配でなりません。

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